昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)の流行りに影響されて、経営層と社内SEの距離が急に近付いたと感じられている方も多いのではないでしょうか。

しかし、社内SEに限らず経営層と現場層の期待や価値観は往々にしてズレてしまうことがほとんどだと考えています。

 

そこで本記事では、株式会社メタップスさんが面白いアンケートを公表されているため、そちらをお借りして経営層と社内SEの情シスにおけるギャップをご紹介していきます。

 

【出典】:株式会社メタップス 経営者と情シスの意識比較調査

情シスに対する期待

 

①image8

<経営者(n=303)>
・IT以外(総務や庶務など)も含む幅広い業務:37.7%
・日々のルーティンワークをそつなくこなす:17.8%
・経営者や上長からの依頼のみに対応(提案などは不要):7.3%
・ITに関する経営判断やアドバイス:27.7%
・その他:3.6%
・わからない/答えられない:5.9%

 

<情シス(n=316)>
・IT以外(総務や庶務など)も含む幅広い業務:16.7%
・日々のルーティンワークをそつなくこなす:24.4%
・経営者や上長からの依頼のみに対応(提案などは不要):7.6%
・ITに関する経営判断やアドバイス:15.2%
・その他:9.5%
・わからない/答えられない:26.6%

要約すると

経営者としては、「何でも屋」として働いてもらいつつITについてはさっぱり分からないからアドバイスして欲しい。場合によっては判断もつかないから任せたい。

社内SE(情シス現場)としては、ITシステムが止まって業務に支障が出ないように注意を払い続けることと認識する一方で、自身が何を期待されているのかよく分からない。

 

ということを表しているように思います。

もはや、このアンケートだけを見ると致命的なギャップが生じていると言わざるを得ません。

「わからない/答えられない」の自由回答

<経営者:自由回答・一部抜粋(n=285)>
・59歳:経営に役立つデータのタイムリーな提供。
・60歳:部署に関係なく、生産性向上を目的としたシステム開発。
・43歳:幅広い知識と経験。
・62歳:経営指標のまとめや、課題の洗い出しを期待。
・40歳:システムの安定とセキュリティ強化。
・63歳:業務改革、働き方改革に繋がるITシステムの構築に期待。
・59歳:各部署の業務を理解した上で最適なソリューションの提案ができる、部署のIT上の悩みについて自分ごととして調べて回答ができること。
・60歳:社員のリテラシーの向上。

 

<情シス:自由回答・一部抜粋(n=232)>
・44歳:テレワーク対応や社内基盤の強化。
・58歳:若手の育成。
・37歳:業務フロー及びプロセスの効率化。
・39歳:社内システムの保守開発。
・43歳:役割にとらわれず全体把握出来ること。
・47歳:現在受け持っている業務の遂行と、チームのとりまとめ。
・27歳:客先の期待に応えること。
・27歳:経験を積み幅広く技術を身につけてステップアップをすること。

 

実のところ

自由回答にした方が経営者と社内SEの感覚が大枠のところで合っているようにも思えます。最初のアンケートは選択式になっているようですが、実のところ「わからない/答えられない」と回答した人ほど、情シスの業務範囲の広さと重要性を理解しているということなのかも知れません。

経営者と社内SEのベクトル

それぞれの会社の文化や歴史によって、ITに対する捉え方は千差万別だと思います。まずはその文化や歴史を築いてきた経営者がどこまでITの必要性と重要性を理解出来ているかということが最初のポイントになるのではないでしょうか。

冒頭のアンケートでは、「情シス」というキーワードを出しているため、少なくとも企業内に情シスが必要であることを理解している経営者が答えているものと推測します。それでもこの結果になることには驚きです。

 

一方、情シス業務をこなす社内SEはどれだけ経営課題を解決するための取り組みが出来ているでしょうか。新しい技術や新しいソリューションに注力すること自体は良いことですが、「社内SE」としてそれが所属している企業の経営課題に直結するものなのかどうかは慎重に考えるべきことだと思います。

 

経営者はITを理解し、社内SEは経営課題を理解し、双方が同じレベルと同じベクトルでIT戦略を伴走しながら検討していくことが、今後の情シスの在り方であり、企業の在り方なのではと考えます。

まとめ

IT企業を除いては、IT畑を歩んできた技術者が経営者になっているパターンは多くないと思います。それだけに、経営者と社内SEの間の期待や考え方のギャップは最初からあって然るべきです。

それでも、DXという言葉をきっかけに経営者はITのことを考えざるを得なくなり、社内SEは会社経営のことを考えざるを得なくなってきたと思います。

今こそ、社内SEが経営に一番近いポジションになるべき時期なのではないでしょうか。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

少しでも参考になれば嬉しいです。

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