どのような職種においても、新たに参画された人材に対する業務教育や業務引き継ぎは多くの苦労が生じると思います。

バリバリの経験者が来てくれるのであれば、単語で一言二言伝えれば理解してくれるので何も考える必要はありませんが、それは夢のまた夢のはなし。

 

そこで本記事では、経験の浅い人材に社内SE業務を教える又は引き継ぐことに焦点を当てて、その手法を考察したいと思います。

社内システムの洗い出し

まず最初に考えるべきは、社内にどのようなシステムが存在しているかを洗い出しておく必要があります。

システムと言うとERPやCRMなど用途別で考えがちですが、ここではハードウェアの台数、パブリッククラウドとプライベートクラウドを含むサーバの台数、アプリケーションの種類(数)と、それぞれがどのように結線されていてどのような構成になっているかを指します。

箇条書きにすると以下をまとめる必要があります。

 

  • ネットワーク機器(UTM、FW、RT、SW、WiFi)の台数とメーカ種別
  • サーバ機器(IaaS、PaaS、ゲストOS、オンプレミス)の台数とOS種別、クラウドサービサー
  • アプリケーション(SaaS、パッケージ、フルスクラッチ)の数と用途
  • クライアント(PC、モバイル、タブレット)の台数とOS種別
  • 物理構成図(クラウドは除く)

 

少なくとも、これらの情報が揃っていなければ、社内システムの全容を伝えることが非常に困難になってしまいます。

ドキュメントの整備

次に上記で洗い出したシステムに附帯するドキュメントを整備する必要があります。これさえ参照することが出来ればトラブルシュートも可能という状態にすることが理想です。

 

  • システム仕様書
  • パラメータシート
  • 論理構成図
  • (世代別)config
  • (世代別)アプリケーションコード
  • 各種管理台帳(ノード、IPアドレス、アカウント、ライセンス、ベンダー、他)
  • 操作手順書
  • 業務別対応フロー

 

実態として、非IT企業でここまでドキュメントが揃えられている企業は少ないと思いますが、これらが存在することで行き当たりばったりで調査する工数が大幅に削減されます。

業務内容の洗い出し

ここまで来てはじめて業務内容の洗い出しが出来るようになります。ただし、こればっかりは各企業でカバー範囲もフローも手順も大きく異なると思うので、一概にこれをと言うことは出来ません。

最近では、多くのプロセスマイニングツールも日の目を浴びるようになってきましたが、費用対効果と有用性においては時期尚早と思えるうえに、自動で業務を洗い出してそれらを自動化したり効率化を図ったりすることを目的とされているため、一般的な業務教育や引き継ぎに使用するには不向きだと思います。

 

ひとつ挙げるなら、非常に根気を要しますが1か月から3か月掛けて工数調査を行うことをお勧めします。工数調査を行うことで、必然的にどの業務にどれほどの時間を要しているかを知ることが出来て、結果的に日々の業務にどのようなものが存在しているかをまとめることが出来ます。

これを継続することが出来れば、待遇改善や人員増の起案根拠になるため、一石四鳥くらいになります。

ただ、ほとんどの人は続きません。

教育スケジュール

これで教育、引き継ぎに必要な情報は揃ったと思います。あとは、これらの情報をどれくらいの時間を掛けて落とし込んでいくかのスケジュールを設定することになります。

分かりやすいところでは、プロジェクト管理に使用されるWBSを使う方法です。ここに附帯してガントチャートを作成すれば、教育者も被教育者もいつ何をやれば良いかが明確になり、ゴールも見えやすくなります。

各マイルストーンやタスクには、上でまとめた情報を記載しておけば自ずと全体像を順番に説明することが出来るようになると思います。

あとは進捗を確認しながら、期限の短縮・延長を調整していけば漏れなく教育が完了することになります。

まとめ

社内SE育成が難航する要因は、何も揃っていない情報をもとに何も知らない相手に伝えることだと思います。これではお互いが苦労しますし、多岐に渡るシステムと業務を漏れなく教えることはほぼ不可能だと考えます。

ぜひ、日頃の業務を通じてここに書いた内容を事前にまとめておかれることをお勧めします。

理想論でありこれを実現するためにはかなりの工数を要することは承知していますが、実はこれらが無い状態で教育することの方が多くの工数を要することになります。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

少しでも参考になれば嬉しいです。

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